GAテクノロジーズ なぜ赤字?

株主の皆さまには、⽇頃より当社の活動にご理解とご⽀援をいただき、誠にありがとうございます。皆さまのお⼒添えにより、第9期(2021年10⽉期)通期決算を終えることができました。

また第9期は、期中において上場後初の下方修正をし、株主の皆さまにご心配をおかけいたしましたことを改めてお詫び申し上げます。

当社は2018年7月に東証マザーズへ上場し、今回が4回目の通期決算発表です。この機会に上場から現在に至るまでの3年5ヶ月間を振り返り、今後の方針と考えをお伝えいたします。

まずは各種数字面での振り返りです。

<上場後初の通期決算と前期の比較>
■通期決算の各種指標・第6期(2018年10月期・上場後初の通期決算)売上高 201億円 / 売上総利益 35.2億円 / 営業利益 6.7億円 / グループ会社 2社・第9期(2021年10月期)

売上高 853億円 (第6期比 +324%) / 売上総利益 114億円 (同 +223%) / 営業利益 △0.3億円 / グループ会社9社 (同 +7社)

■RENOSYマーケットプレイスの主要KPI・第6期年間成約件数 1,000件 / RENOSY会員数 31,849人・第9期

年間成約件数 3,460件 (第6期比 +240%) / RENOSY会員数 238,315人 (同 +588%)

■ITANDIの主要KPI・第6期管理会社向けSaaS 契約社数 107社 / 仲介会社向けSaaS 契約社数 82社・第9期

管理会社向けSaaS 契約社数 1,255社 (第6期比 +1073%) / 仲介会社向けSaaS 契約社数 400社 (同 +388%)

<昨年度との比較>
■通期決算の各種指標・第8期(2020年10月期)売上高630億円 / 売上総利益 98億円 / 営業利益 18.8億円・第9期(2021年10月期)

売上高853億円 (YoY +35%) / 売上総利益 114億円 (同 +16%) / 営業利益 △0.3億円

■RENOSYマーケットプレイスの主要KPI・第8期年間成約件数 2,723件 / RENOSY会員数 98,058人・第9期

年間成約件数 3,460件 (YoY +27%) / RENOSY会員数 238,315人 (同 +143%)

■ITANDIの主要KPI・第8期管理会社向けSaaS契約社数 700社 / 仲介会社向けSaaS 契約社数 180社・第9期

管理会社向けSaaS 契約社数 1,255社 (YoY +79%) / 仲介会社向けSaaS 契約社数400社 (同 +122%)

このように当社は、上場前から上場後、そして今回ご報告の第9期も一貫して、RENOSYマーケットプレイス・ITANDIともにネットワーク効果を高め、マーケットリーダーになることに取り組んで参りました。

不動産業界の課題とチャレンジ

不動産は巨大市場であり、70〜80年前から存在するレガシーな産業ゆえに先行する企業や競合も多数おり、マーケットリーダーになることは簡単なことではありません。一方で、昨今レガシーな業界がAIやテクノロジーによってディスラプトされるシーンが増えてきているのも事実です。金融、保険、医療、農業、教育、建設。もちろん不動産もその1つです。しかし、不動産業界ではテクノロジーで業界を変革した明確なマーケットリーダーはまだ現れておりません。

RENOSYマーケットプレイスの投資領域が取り組むTAMは約65兆円と膨大で、ITANDIの賃貸領域も約1.8兆円と、ともに大きなマーケットがあります。当社は創業からの志を胸に、必ずこの巨大市場をテクノロジーで変えていきます。

さて、それをどう変えていくのかを考える際に、改めて不動産業界及びそれをとりまくユーザー環境の課題について整理したいと思います。

まず不動産業界の課題は大きく3点あり、①生産性が低く業務がアナログ②情報の非対称性

③ユーザーの体験の悪さ

そして不動産業界からつながっていくより大きな社会課題として、①環境問題(中古不動産流通・ペーパーレス化)②人生100年時代に向けた備え(住まいや資産)③少子高齢化が抱える空き家問題

も挙げられます。つまり、不動産業界の課題は社会課題にもつながっていくのです。

課題が大きく歴史も長い産業が、テクノロジーやイノベーションによって変わる瞬間を、私たちは目撃してきました。Appleが携帯電話を変え、Amazonが買い物体験を、Teslaが自動車を、Uberが移動や食を、Airbnbが旅行を変え、世の中が変わりました。

繰り返しになりますが、GAグループは不動産業界を大きく変えるマーケットリーダーを目指しています。

大きな成長を目指さずに1年後の利益を追求するのであれば、取るべき経営方針も異なったものになります。従来通りアナログで、情報の非対称性があり、ユーザー体験の悪さに目をつぶったまま目先の利益だけを追うならば、不動産取引のオンライン化には投資しません。また、電子入居申込などのDXの浸透においても、ある程度のシェアが獲得できたからといって、マネタイズに走り、それなりの収益を取りにいくこともしません。

「目の前の収益」と「長期におけるシェア獲得」ならば、常に後者を優先しています。なぜなら、マーケットリーダーになることが結果的に株主価値最大化につながると思っているからです。

第9期に下方修正に至った原因も、この考えのもと将来の大きな収益獲得の為に大きく投資をしていった結果です。しかし、当初からシェアをとる為に赤字の計画をすることと、期中に下方修正をして赤字になることでは赤字の意味合いが違うという株主や投資家の皆さまのご不満は理解しております。

この点においてまずお伝えしたいのは、既存事業がうまくいかなくなったのではないということです。既存事業のRENOSYマーケットプレイスは、第9期においても40億円近い利益を生んでいます。期初では60億円近くの利益を見込んでいたので予定からは大きく利益が減ったことは事実ですが、40億円近い利益は出ており、事業として問題ありません。収益率が下がり、20億円分の投資が計画より先行したことが大きな要因です。

第10期(2022年10⽉期)もRENOSYマーケットプレイス、ITANDIともに、マーケットリーダーになれるかどうかの非常に重要なタイミングだと思っていますので、投資を緩めることはしません。

では、なぜそこまでマーケットリーダーにこだわるのか。

それは、マーケットリーダーになることが、ネットワーク効果・データネットワーク効果・コスト優位性・ブランド価値向上、という4つの大きなメリット獲得につながり、将来収益が最大化するからです。そしてなによりも、先述の通り、取り組んでいるマーケットが大きいからです。

しかし、投資は規律を持って行っていきます。ROIが合わない事業は速やかに止め、コストコントロールをしっかり行います。資本効率を考えコスト意識を強く持てる組織にしなければ大きな成長は勝ち取れないと思っています。

マーケットリーダーに向けた具体的な取り組み(RENOSYマーケットプレイス)

RENOSYマーケットプレイスでは、マーケットリーダーになるために、買い手側のオンライン不動産取引に取り組んでいます。

買い手側の取引の流れは以下の通りです。①WEB集客・ポータルサイト(インターネット)②対面接客・紙の手続き(リアル)

③契約・紙の手続き(リアル)

このプロセスを、テクノロジーを活用し一気通貫になめらかにしています。
不動産は一般的な消費財とは異なり、何度も購入した経験があるお客様は少なく、購入体験そのものの比較が難しい領域です。当社の顧客も、初めて不動産を購入するという方がほとんどです。比較がないからこそ、購入体験に少しでも不便があれば顧客満足度は下がります。

何千万円という高額な商品なので、ネットのみで完結ではなく、どんなにオンライン化を進めても成約するプロセスでは必ず人が介在します。したがって、テクノロジーで購入体験をなめらかにするだけでなく、人財育成も不可欠です。テクノロジーと人、その双方に均等に投資をしていかなければ、PropTech(不動産テック)は成り立たないのです。

加えて、不動産の売買は購入体験と売却体験でオペレーションが異なるので、買い手側のオンライン化だけではなく、売り手側のオンライン化にも取り組まなければいけません。

売り手側の取引の流れは、①一括査定・DM(インターネット)②対面接客・紙の手続き(リアル)③契約・紙の手続き(リアル)

です。この一連の手続きを、買い手側同様にオンライン化を進めていきます。

また、不動産契約の99%はファイナンス(融資)を活用するためファイナンスの効率化も必要ですし、当社が扱っている不動産は投資目的で購入される方がほとんどなので、購入後に何十年間と続くプロパティマネジメントにおいての顧客体験の向上も極めて重要です。不動産の顧客体験全体の改善のためには、売買だけではなくこれらの幅広い領域への投資が必要です。

もちろん、日々のリアルオペレーションを行なう中で得られる顧客のリアルなニーズからもヒントを得ます。商品ラインナップの拡充、顧客一人ひとりのニーズに合わせた商品や人のレコメンドなど、たくさんの改善を積み重ねています。顧客体験を向上させる改善点は無数にありますが、限られたリソースの中で優先順位をつけ、顧客が最も課題と感じる部分から取り組んでいます。一方で、同時にすべてを改善する方法を諦めてはいけないとも考えています。難解な課題に向き合い、できる方法を考え抜くことが私たちの存在価値だと思っているからです。

RENOSYマーケットプレイスはオンラインのみで完結するビジネスではないので、数日間でユーザーが何百万人も増えるというロケットスタートはできませんが、地道に改善していくことで、競合が追いつけない強固な基盤が作られ指数関数的に伸びると考えています。

マーケットリーダーに向けた具体的な取り組み(ITANDI)

来年、ITANDIにも大きな節目がやってきます。2021年5月にデジタル改革関連法案が成立し、その中には、宅地建物取引業法の改正も含まれました。2021年5月19日に公布(※1)され、公布日から準備期間を経て1年以内(2022年5月まで)に施行される予定とのことです。これにより賃貸の電子化が一気に加速することを期待しています。

待ちに待った電子化です。

ITANDIではこの「賃貸の電子化」に向けて、2017年10月から電子入居申込サービス(申込受付くん)を提供してきました。時代を読み、マーケットリーダーになるために4年以上にわたる種まきをしてきた結果、現在では管理戸数上位50社の不動産会社の内62%がこのサービスを使うまでに至りました。

ITANDIの出発点である、電話自動応答による物件確認サービス(ぶっかくん)をローンチしたのが2015年6月。そこからは6年半が経ちました。これまで誰もやってこなかった、物件の確認、そして入居申込から退去までの一気通貫のDXを完成させていくことが、結果的に消費者のメリットにつながっていくと考えています。

レガシーな業界の中で、後発の企業がマーケットリーダーになるには根気が必要です。RENOSYマーケットプレイスもITANDIも、ともに足掛け7年間、テクノロジーで業界を変革すべくサービス改善を絶えず繰り返してきました。根気強く、目先の小さな成功ではなく大きな成功を目指してきたのは、私たちGAグループがやらなければ不動産業界は変わらないと思っているからです。

OUR AMBITION(私たちの志)

今期から、MISSIONとVISIONの整理を行いました。

これまでは、MISSION「テクノロジー × イノベーションで、人々に感動を」、VISION「世界のトップ企業を創る」としていましたが、これらを統合し、GAグループの使命と目指す先をOUR AMBITIONとして再定義しました。

OUR AMBITION「テクノロジー × イノベーションで、人々に感動を生む世界のトップ企業を創る。」です。

GAテクノロジーズ なぜ赤字?

社員数も増えていく中で、MISSIONとVISIONの違いを正しく理解してもらうことの難易度は上がっていきます。グループの全社員が会社の存在意義を理解し、目指すべきこと、やるべきことをはっきりと認識できるようにベクトルを定めるべく、この変更に至りました。

OUR AMBITIONは、私たちの志という意味です。
これは当社名の由来である、G=Genuine(本物の)、A=Ambition(志)から引用しています。

コロナ禍で消費者のマインドや行動が変わり、不動産事業者のマインドも変わった中、私たちGAグループの立ち位置を考えれば、歴史が変わるのは「今」しかありません。そしてそのチャレンジは、グループ全社員がベクトルを合わせなければ達成できず、また、達成できなければ、この業界は何十年経っても変わらないままになってしまいます。そのために断固たる決意を持ち、社名の由来を引き継いだOUR AMBITIONを定めました。

そしてOUR AMBITIONに向け、大きな変革の為に重要だと思うことを次に挙げてまいります。

成長のための7つのテーマ

①組織文化の醸成・組織体制の構築
当社は上場してから8つの会社やサービスのM&Aを行いました。また、創業時から新卒採用を実施し、新卒中途を問わずリアル人材とテクノロジー人材の融合を図ってきました。これらにより組織内において異なる文化が融合することが常となり、さらに8つのM&A経験によりマネジメント方法を確立し、グループ1000人体制に向けた組織体制の構築を進めています。

②人財の融合
業界知識がないほうが先入観なく大胆な挑戦ができると考えて、当社ではこれまで不動産業界の経験者をほとんど採用してきませんでした。しかしマーケットリーダーになっていくためには業界に精通し歴史を知っているメンバーが必要だと考え、大手不動産企業の役員クラスのメンバーを何名か採用しました。歴史を知っていることは、その大変さも同時に知っていることでもあります。それが逆に足かせにもなることもあるかもしれませんが、落とし穴にハマらない大きな助けにもなり得ます。歴史から学ぶことも重要だと考えています。

③リーダーシップ
昨年の「株主の皆さまへ」の文中において、当社の行動指針の話をしました。今回、OUR AMBITIONの制定に合わせて行動指針の見直しも行い、そこに追加された項目のひとつが「リーダーシップ」です。
たとえ1万人の社員がいたとしても、それぞれが20%の力しか発揮しなければ2000人分の力にしかなりません。ベンチャー企業の大きな強みは、一人ひとりの当事者意識の高さです。1000人規模の会社でも、各々が200%の力を発揮すれば、1万人の会社に匹敵する力を発揮することができます。逆もまた然りであり、1000人がわずか10%の力しか発揮しなければ、さらに規模の小さな100人の組織に敗れる可能性もあります。小が大に向き合うには、一人ひとりのリーダーシップの発揮が求められます。

④カスタマーフォーカス「カスタマーフォーカス」も新たに行動指針に加わりました。当社はBtoC、BtoB双方のサービスを行っています。すると、事業を行う上で消費者と事業者の利益が相反することがしばしばあります。そんな時の意思決定はやはり消費者に向くべきだと私たちは考えます。

なぜなら、当社が向き合っているBtoBの顧客も、その先に居る消費者と向き合っているからです。カスタマーフォーカスを追求し消費者に選ばれ続けるサービスではないと、サービスは愛されません。マーケットリーダーを目指すのもすべては顧客の利便性を高めるため、という一番重要なことを忘れてはいけないと考えています。

⑤イノベーション「イノベーション」はOUR AMBITIONにも含まれる言葉ですが、改めて行動指針の中にも加えました。

競合との競争、組織の課題、景気や外部環境の変動と、事業を行っていると様々な問題に直面します。そんな時には、状況を突破する新しい取り組みを実行したり、小さいけれども確実に改善できることを積み重ねていくというようなことが求められます。企業文化として、そのような新しい発想を作り出せる組織や人を育成できるかが非常に重要だと考えています。GAグループの一人ひとりが、日々向き合う業務の中で大小を問わずイノベーションの種を探して行動しなければいけないのです。イノベーションのない組織は顧客に価値を提供できず生き残れないと、GAグループの中でも強く危機感を持つべきです。

⑥短期的収益と中長期収益のバランス第9期において約120億円の資金調達を行いました。これに対して、株主や投資家の皆さまが期待する資本利益率を出せているかどうかを考えていきます。

その期待に応える為には、売上高の伸長、粗利額の伸長、マーケットシェアの拡大、適切なコストコントロール、競合に影響ない範囲の情報開示が大切です。短期的な収益追求ではなくあくまでも中長期の収益を優先する考えですが、顧客、株主や投資家、ステークホルダーからの大切なお金を適切かつ慎重に使ってまいります。

⑦オーガニック成長とM&Aのバランス
M&Aで時間を短縮化したとしても、既存社員や既存事業自体が弱体化してしまうと、本来の目的である事業成長が達成されません。本来されるべきシナジーの掛け算が成立しないのです。したがって、既存事業のオーガニック成長、M&A企業の成長、M&Aによるシナジーバリュー、これら3つそれぞれの個別ROIを常に意識していきます。なぜなら、全体最適を考えすぎると個別の成長鈍化に気づくのが遅くなる弱点をはらんでいるからです。事業ごとに部分最適し、それぞれがNo.1を目指すことで、鋭角に成長する事業同士の本当のシナジーバリューが現れると考えています。

最後に

私たちの企業価値はさらに大きく出来ると、常に思っています。

しかしすべては、顧客がRENOSYやITANDI BBをなくてはならないサービスだと強く感じ、その結果として売上や利益が生まれ、それが最終的に企業価値の最大化へとつながっていくものだと思っています。そのためにも顧客に真摯に向き合い、改善と投資を続けます。

そして株主や投資家の皆さまに選ばれる会社になるべく、グループ社員一同、企業成長に尽力してまいります。下方修正によりご迷惑をおかけしたことは絶対に忘れず、この経験が成長のターニングポイントだったと言えるように、全力で経営の舵取りを行なっていく所存です。

※1:デジタル庁設置法案(参議院・議案審議情報)https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/204/meisai/m204080204027.htm

代表取締役社長執行役員 CEO

GAテクノロジーズ なぜ赤字?